【129】 松岡利勝農水大臣 自殺 −安倍首相の責任と参院選−  2007.05.28


 28日正午すぎ、新装成った赤坂の衆議院議員宿舎の1102号室で、松岡利勝農水相が首をつって自殺を図り、午後2時、搬送先の慶応病院で死亡が確認された。
 安倍内閣の発足に際して、私は以前、このサイトの【118】に松岡氏の入閣に、「この男、危ない」と書いた( http://www.ztv.ne.jp/kyoiku/Nippon/118abestart.htm )。 故人についてそれを蒸し返すつもりもないが、昨今の事務所費問題、監督すべき緑資源機構からの献金…など、やっぱりと思っていたところ、今日の午後1時30分、NHKが番組を中断して伝えた「自殺」には、さすがに驚ろいた。
 そんなやわな男だとは思ってもいなかったのだが、強面(こわもて)な男ほど打たれ弱いということか。自ら命を縮めるぐらいならば、「辞表」を書く勇気をなぜ持てなかったのか…。
 その意味で、安倍首相は責任を問われることだろう。松岡氏に彼なりの論理で説明させ(あるいは謝罪であったかもしれないが)、進退を選択させれば、この結果は招かなかったのではないか。内閣の面子ばかりを重んじて、かたくなにボストを守らせるばかりでなく、辞任という選択を与えてやらなかったことの責任は問われるところである。
 松岡氏が農水大臣のポストに留まることは、大きな無理があり、激しい批判にさらされなければならないことであった。今の巨大与党ならば、批判を覚悟すれば、松岡氏を残留させることも、問題を解決する道筋を示さないままに社会保険庁を改組する法案を可決成立させることと同様、思うままに操ることができてしまう。
 こんな政治の現状を前にしての松岡氏の自殺が、安倍内閣に与える打撃は大きい。国民も、先の郵政選挙で、自民公明に300を越える議席を与えたことの危うさに、ようやく気がつくのではないだろうか。
 憲法改正、防衛省への昇格、教育基本法の改定と教育三法の成立…など、安倍政権の仕事はそれなりの事跡を残しているのだけれど、圧倒的な議席数にタカをくくって、批判に丁寧に対応せず、正面突破を敢行してきた結果がこれである。百万人でも我行かん…と、批判を一手に引き受けて進むには、松岡氏の精神は繊細すぎたのであろう。安倍首相は、その点を読み間違えた。国民の触覚は、安部政権の国会運営のひずみが招いた惨劇と捕らえることだろう。
 これからの政権運営は慎重にならざるを得ないだろうし、参議院選への影響は必至である。自民公明の与党に議席を与えすぎることの危うさを、国民は警戒するだろうから…。


 しかし、この自民党を、民主党は追い詰めることができるかどうか…、私ははなはだ頼りないと見ている。松岡氏の自殺によって国民の中に掘り起こされた強権与党への警戒感と、国が詐欺を働いていると言える年金問題が明らかになってきている今日、これらの点を明確な争点に挙げて戦えば、民主党は参院選に確実に勝利することができるだろう。
 が、今の民主党に、これらの問題を争点として国民に訴えていく力があるかどうか…? 繰り返すけれど、私は民主党にはそれだけの論理力がない…、自民党に矛先をかわされて論点をぼかされ、焦点の定まらない選挙をまた繰り返すのだろうと思う。
 民主党を中心とする野党勢力に参議院での過半数がほぼ確実と言えるほどの材料があり、参議院を拠点として民主党政治を国民にアピールする絶好の機会が訪れているというのに、自公の衆議院議席の多さに為す術もなく牛耳られている姿を見ていると、この政党に期待することが無理なのではないかと思えてくるのである。
 この国のために、政権交代は必要なプロセスである。この国が抱える問題の根底部分は、政権交代で洗い直さなければ正常にならないと、私はかねてから主張している【参照】。政官業の癒着・利権体質や公務員改革、機密費・裏金…、そして今回のような政権のおごりは、政治を停滞させ、政治不信を生み出す。
 だから、民主党にはがんばってほしいのだ。政治の歪みや澱みを是正してこの国のかたちを正すために、健全な野党が育って政権交代を何度か経験し、政界再編を行っていくことが必要だろう。政治は利権・癒着を断ち切り、経済は甘えの構造を変革し、国民は自らの責任において日々を生きて、将来に拓けた日本を築き上げていきたいと思う。


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